日本の文化、美意識、アイデンティティ、心理、思想を知るためのお薦めリーディング・リスト
- EK
- 2022年11月25日
- 読了時間: 10分
更新日:2022年11月30日
2022/11/25
先日、サンフランシスコに住まう日系2世のアメリカ人のいとこ夫婦、そして彼らのふたりの娘たちのために、このリストの英語版をつくりました。
その後、私のヨーロッパ人の親友たちにも、送りました。
日本人でも、日本について、その特異性や素晴らしさをあまりよく知らない人も少なくないと思い、良い機会なので、このブログ用に、以下に日本語版も書き出しました。
言わば、「初めての日本文化入門」用の王道・定番の基本的な文献ばかりです。
ご関心あれば、活用してください。

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🐤🎾✨01
川端康成
美しい日本の私
(講談社現代新書)
内容紹介
雪、月、花に象徴される日本美の伝統は、「白」に最も多くの色を見、「無」にすべてを蔵するゆたかさを思う。美の真姿を流麗な文章にとらえた本書は、ノーベル賞受賞記念講演の全文に、サイデンステッカー氏による英訳を付した、日本人の心の書である。 「山水」といふ言葉には、山と水、つまり自然の景色、山水画、つまり風景画、庭園などの意味から、「ものさびたさま」とか、「さびしく、みすぼらしいこと」とかの意味まであります。しかし「和敬清寂」の茶道が尊ぶ「わび・さび」は、勿論むしろ心の豊かさを蔵してのことですし、極めて狭小、簡素の茶室は、かへって無辺の広さと無限の優麗とを宿してをります。1輪の花は100輪の花よりも花やかさを思はせるのです。開ききった花を活けてはならぬと、利休も教へてゐますが、今日の日本の茶でも、茶室の床にはただ1輪の花、しかもつぼみを生けることが多いのであります。――本書より
商品説明
1968年、川端康成は日本人として初のノーベル文学賞を授与され、ストックホルムでの授賞式には紋つき袴の正装で出席、格調高い日本語でスピーチを行い、深い感銘を与えた。本書はその全文である。冒頭、まず道元「春は花夏ほととぎす秋は月冬雪さえて冷(すず)しかりけり」、明恵「雲を出でて我にともなふ冬の月風や身にしむ雪や冷めたき」、良寛「形見とて何か残さん春は花山ほととぎす秋はもみぢ葉」の三僧の歌を紹介して、自然との合一ということこそが日本人の精神伝統の根本であることを説き、ついで、芥川の遺書にある「末期の眼」という語や一休の「魔界入り難し」の語をひいて、死や虚無などともこの精神が深く通じていることを述べる。しかし、それは、西欧的な死や無の観念とは違って、死即生、無即有というような豊饒(ほうじょう)自在な世界であり、そこから、日本画、茶、花などのさまざまな伝統文化が生まれてくるのである。以下、伊勢物語から源氏物語へ、古今集から新古今集へと極まっていった古典文学の伝統をたたえ、そのすべてに東洋的無および自然意識が流れていることをあらためて強調して、この印象深い講演は閉じられる。世界に向かって、日本の精神伝統の独自性と豊かさを示した卓抜な日本文化論であると同時に、タイトルからもうかがわれるように、現代日本の文学者である自身にもこの伝統が脈々と受け継がれていることを高らかに宣言する記念碑的作品である。(大久保喬樹)
著者について
【川端康成】
1899年大阪に生まれた。東京帝国大学国文科卒業。小説『伊豆の踊子』『雪国』等を経て、戦後は、『千羽鶴』『山の音』『古都』『眠れる美女』を発表。1968年ノーベル文学賞受賞。1972年没。
【エドワード・G・サイデンステッカー】
1921年アメリカ合衆国コロラドに生まれた。コロンビア大学・ハーバード大学・東京大学の各大学院で日本文学を専攻。ミシガン大学教授。
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🐤🎾✨02
柄谷行人
日本近代文学の起源
増補改訂版
岩波書店
内容(「BOOK」データベースより)
明治二十年代文学における「近代」「文学」「作家」「自己」「表現」という近代文学の装置それ自体を再吟味した論考を全面改稿した決定版。文学が成立して思考の枠組みになる過程を精神史として描き、「起源」を考察しつつ「終焉」の地平までを視野に収めた古典的名著。
「歴史主義的普遍性」の基盤を大胆に覆す鋭い知性。新たな思考の視座を極めて丹念に布置・構築して行く、最も現代的な「知の震源」柄谷行人の鮮やかにして果敢な挑戦。名著『マルクスその可能性の中心』につづく柄谷思想の原点となる歴史的快著。
■目次(原本の文庫版より)
Ⅰ 風景の発見
Ⅱ 内面の発見
Ⅲ 告白という制度
Ⅳ 病という意味
Ⅴ 児童の発見
Ⅵ 構成力について
あとがき
著者から読者へ
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
柄谷/行人 1941・8・6~。文芸批評家。兵庫県生まれ。1965年、東京大学経済学部卒業。67年、同大学大学院英文学修士課程修了。69年、「「意識」と「自然」―漱石試論」で群像新人文学賞を受賞。75年から77年、80年から81年、83年から84年と、イエール大学、コロンビア大学の研究員を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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🐤🎾✨03
村上春樹
ねじまき鳥クロニクル
全3巻 完結セット
(新潮文庫)
日本語の良い紹介文が見当たらないのですが、村上春樹の最高傑作と思います。
村上春樹
1949(昭和24)年、京都府生れ。早稲田大学文学部卒業。
1979年、『風の歌を聴け』でデビュー、群像新人文学賞受賞。主著に『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞受賞)、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『ノルウェイの森』、『アンダーグラウンド』、『スプートニクの恋人』、『神の子どもたちはみな踊る』、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』など。『レイモンド・カーヴァー全集』、『心臓を貫かれて』、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、『ロング・グッドバイ』など訳書も多数。
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🐤🎾✨04
夏目漱石
こころ
(新潮文庫)
内容紹介
あなたはそのたった一人になれますか。
親友を裏切って恋人を得た。しかし、親友は自殺した。増殖する罪悪感、そして焦燥……。知識人の孤独な内面を抉る近代文学を代表する名作。
鎌倉の海岸で、学生だった私は一人の男性と出会った。不思議な魅力を持つその人は、“先生"と呼んで慕う私になかなか心を開いてくれず、謎のような言葉で惑わせる。やがてある日、私のもとに分厚い手紙が届いたとき、先生はもはやこの世の人ではなかった。遺された手紙から明らかになる先生の人生の悲劇――それは親友とともに一人の女性に恋をしたときから始まったのだった。
内容(「BOOK」データベースより)
親友を裏切って恋人を得たが、親友が自殺したために罪悪感に苦しみ、自らも死を選ぶ孤独な明治の知識人の内面を描いた作品。鎌倉の海岸で出会った“先生”という主人公の不思議な魅力にとりつかれた学生の眼から間接的に主人公が描かれる前半と、後半の主人公の告白体との対照が効果的で、“我執”の主題を抑制された透明な文体で展開した後期三部作の終局をなす秀作である。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
夏目/漱石 1867‐1916。江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)に生れる。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学した。留学中は極度の神経症に悩まされたという。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、「吾輩は猫である」を発表し大評判となる。翌年には「坊っちゃん」「草枕」など次々と話題作を発表。’07年、東大を辞し、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50
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🐤🎾✨05
夏目漱石
明暗
(集英社文庫)
内容紹介
結婚して半年、平凡に暮らす津田。しかし夫婦仲はどこかぎくしゃくしていた。昔の恋人・清子の居場所を知った津田は、密かに彼女の元へ向かう。人間のエゴイズムを描く未完の絶筆。(解説/山城むつみ 鑑賞/水村美苗)
内容(「BOOK」データベースより)
何不自由ない新婚生活を送っているかに見える津田とお延。実は手元不如意の上、津田は持病に悩まされている。津田のかつての恋人・清子の存在が夫婦の生活に影を落としはじめ、漠然とした不安を抱く二人。自らの善意を疑わず彼らに近づいてくる吉川夫人や津田の妹・お秀、始終厄介事を持ち込む友人・小林など一人ひとりのエゴがせめぎあう。複雑な人間模様を克明に描く、漱石の絶筆にして未完の大作。
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🐤🎾✨06
河合隼雄
河合隼雄著作集〈8〉
日本人の心
これも、日本語の良い紹介文が見当たらないのですが、河合隼雄の思想と分析批評を体系的に知ることができる名著です。
河合隼雄はどれを読んでも名著揃いですが、とりわけ以下の4冊も素晴らしいです。
⭐️河合隼雄著作集 第2期〈10〉
「日本人」という病
⭐️河合隼雄著作集〈10〉
日本社会とジェンダー
⭐️中年クライシス
(朝日文芸文庫)
内容紹介
中年ほど心の危機をはらんだ季節はない──。日本文学の名作12編を読み解き、職場での地位、浮気、子どもの教育、老いへの不安に戸惑い、人生の大切な転換点を体験する中年の心の深層をさぐる、心理療法家ならではの「中年論」。
出版社からのコメント
最も意気盛んな安定期に見えて、中年ほど心の危機をはらんだ季節はない――。 心理療法の大家が、 夏目漱石、大江健三郎、佐藤愛子、山田太一などの日本文学の名作12編を読み解き、 中年の心の深層をさぐる。 本書に登場する小説の登場人物たちは、 職場での自らの立ち位置、配偶者の浮気、子どもの教育、老いへの不安など、 ありふれているようで本人にとっては重大いな問題に直面し、 戸惑い、やがて人生の大切な転換点を体験する。 読者にその問題が降りかかってきたとき、どう立ち向かえばよいか。 著者ならではの「中年論」。 [目次] はじめに 1. 人生の四季 夏目漱石『門』 2. 四十の惑い 山田太一『異人たちとの夏』 3. 入り口に立つ 広津和郎『神経病時代』 4. 心の傷を癒す 大江健三郎『人生の親戚』 5. 砂の眼 安倍公房『砂の女』 6. エロスの行方 円地文子『妖』 7. 男性のエロス 中村真一郎『恋の泉』 8. 二つの太陽 佐藤愛子『凪の光景』 9. 母なる遊女 谷崎潤一郎『蘆刈』 10. ワイルドネス 本間洋平『家族ゲーム』 11. 夫婦の転生 志賀直哉『転生』 12. 自己実現の王道 夏目漱石『道草』 あとがき
内容(「BOOK」データベースより)
自我を確立し、社会的な地位を得たあと、人は何を求めて生きるのか。中年期になると人は「何かが足りない」と不可解な不安に駆られるものだ。夏目漱石、大江健三郎、山田太一など、日本文学の名作12編を読み解き、登場する中年たちの心の深層を探る。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
河合/隼雄 1928年兵庫県生まれ。京都大学理学部卒業。臨床心理学者、心理療法家。62~65年スイスのユング研究所に留学、日本人初のユング派分析家の資格を取得。京都大学教授、国際日本文化研究センター教授を歴任、2002年文化庁長官に就任。1982年『昔話と日本人の心』で大佛次郎賞、88年『明恵 夢を生きる』で新潮学芸賞受賞、95年紫綬褒章受章、98年朝日賞受賞、2000年文化功労者顕彰。07年7月逝去。
⭐️「老いる」とはどういうことか
(講談社+α文庫)
内容紹介 「老いる」ことを人生の大切な課題と考える人が急に多くなった、河合隼雄はいう。本書は、臨床心理学の第1人者が、110のはなしを通して、誰もが自分のこととして、また身近な人のこととして、直面する切実な課題に迫る。 老人は何もしないから素晴らしい、「終わり」を考えるより「はじめ」の練習を、等々、これまでの老年観を一新させ、これからの生き方を示唆することばに満ちた1冊。ベストセラー『老いのみち』を改題・再編集、待望の文庫化。
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🐤🎾✨07
河合隼雄 村上春樹
村上春樹、河合隼雄に会いにいく
(新潮文庫)
内容(「BOOK」データベースより)
村上春樹が語るアメリカ体験や’60年代学生紛争、オウム事件と阪神大震災の衝撃を、河合隼雄は深く受けとめ、箱庭療法の奥深さや、一人一人が独自の「物語」を生きることの重要さを訴える。「個人は日本歴史といかに結びつくか」から「結婚生活の勘どころ」まで、現場の最先端からの思索はやがて、疲弊した日本社会こそ、いまポジティブな転換点にあることを浮き彫りにする。
ふたりの思想の大枠をざっくり把握するには便利なハンディ本です。対談なので読みやすいです。
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今日久しぶりに会ったアートのキュレーターの男性は20代の頃から仲良くさせてもらってる方なのですが、その方だったら日本を知るためのどんな本をオススメするか聞いてみた🐤🎾万人向けは考えるのがたいへんということで、彼の日系アメリカ人のいとこの子どもたちに向けて、私的に挙げてもらった🐤🎾
その返事がとても意外でおもしろかった🐤✨まずは、1970年代の少女マンガ🐤大島弓子や萩尾望都🐤✨そして、片岡義男🐤✨あと最近の多和田葉子の日本滅亡後を書いた3部作とか🐤🎾✨どれもナイスで面白い良い案だなって思った🐤✨🥁
ディスコードの仲間のボリンさんが、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』と柳田邦男を挙げてくださいました🐤✨たしかにどっちも基本の古典🐤✨🌊第二弾で紹介したいな🐤✨あと、岡倉天心の『茶の本』とかもいいよね🐤✨