オノ・ヨーコさんの想い出
- EK
- 2022年12月8日
- 読了時間: 4分
2022/12/08

今日は、アーティストのオノ・ヨーコさんの想い出を書きたいと思う。
なんだか、このブログ欄自体、「想い出語りコーナー」みたいなテキストが連続しているが、まあ、そもそも、このウェブサイトからして、「自分の死後も、自分の書いたテキストや、そこで語るつもりの父や祖父母や自分の人生の体験の断片を残したい」という動機で始めたものなので、気分は半分「終活」モードというか。この歳まで生きてくれば、そりゃあ、ずいぶんとたくさん、想い出というものもあるもので、言ってみれば、それらは、私のいちばんの宝物なのである。
オノ・ヨーコさんとは、『美術手帖』の編集者時代、幾度か、お仕事をご一緒させて頂いた。そのうち2回は個人特集号で、とても大きなお仕事だった。1回目は、初めての大回顧展が日本に上陸するのに合わせて、2003年の夏から秋にかけて制作、2回目は、広島での大型個展に会わせて、2011年の春から夏にかけて制作した。1回目は、当時編集長だった楠見さん(オノ・ヨーコさんの昔からのファンで、いっぱい良いアイディアやアドバイスを頂戴した)をはじめ、数人の編集部スタッフに数本ずつ記事を担当して助けてもらってつくった。2回目は、当時の部下だった藤田容子ちゃんとふたりでつくった。


1回目の表紙は、すごく満足している。2回目の表紙は、私は、このブログトップに載せた、緑の中にあの白い梯子がインストールされてヨーコさんが写っている画像でいきたかったが、サラリーマンの悲哀というか、多数決で負けて、この幻冬舎の書籍とまったく同じポートレイト写真を使うことになり、渋々受け入れざるをえなかった。
2003年のときは、ニューヨークのオノさんのスタジオと直接メールでやりとりしつつ、現地在住のアート・ライターの友人、藤森愛実さんにコーディネートもサポート頂きつつ、インタビューの設定や質問は、楠見さんと愛実さんと相談して事前に仕込み、愛実さんにヨーコさんのスタジオを訪ねてもらい、対面でロング・インタビューしてもらった。それが巻頭の「100年後の私たちは、ユートピアに住んでいる」という記事だ。タイトルにあるとおり、じつにヨーコさんらしい、希望に満ちた未来観溢れる発言がとてもユニークで、良いインタビューだった。そのほか、全体のつくりとしては、「オノ・ヨーコ事典」とも言うべき細かいつくりで、ヨーコさんの人生と、アーティスト、そして、ミュージシャンとしてのお仕事を、網羅的に再考した構成になっている。なかでも読者に好評だったのは、彼女の代表著書である『グレープフルーツ・ブック』からのインストラクションを抜粋したページや、長い物語風の年譜記事だった。興味がある方は、画像を拡大して読んでみてほしい。






アーティストとしてのヨーコさんの魅力は、またいつかあらためて一本、真剣に書いてみたいものだが、ひと言で言えば、「受け手の想像力を刺激し、それまでまるで思いもしなかった考えや態度を彼らから引き出し、行動させる力」にあると思う。そして、先述の『グレープフルーツ・ブック』からの抜粋を読めばおわかり頂けるように、ヨーコさん自身が、桁外れのスケールの、壮大、かつ、詩的で美しくユニークな想像力の持ち主であり、「インストラクション(指示)」連作をはじめとする彼女のアートワークには、そんな魅力が満ちあふれている。
2011年の個人特集のさいは、2本、ロング・インタビューを収録したが、最初の1本は、楠見さんに聞き手になってもらい、ニューヨークのヨーコさんとお電話で行った。もう一本は、美術ジャーナリストの藤原えりみさんと藤田くんと写真家の芳次史成さんと一緒に広島へ行き、展覧会開幕直前に、えりみさんに対面で行って頂いた。これらのインタビューのほか、ヨーコさんの美しくパワフルな個展展示や「インストラクション」連作の魅力を視覚的に伝えるような記事を作成した。









広島で初めてお逢いしたヨーコさんご本人は、その作品からもうかがえるとおり、あるいはそれ以上に、驚くほど純粋(ピュア)で、高潔(ノーブル)な魂を持つ稀有な方、という印象を強く受けた。
人類の、地球の、宇宙の平和を、人びとにイマジンしてもらう行為の大切さを感じて、ご自身の小さなその身体で、全身全霊を賭けて、そのために必要な行動をとることを、あたかもご自身の人生に割り当てられた当然の使命(ミッション)であるかのように、とても
自然に、大切に、手がけてこられた方ではないか、という感じがした。
そこには、これまでの私の人生ではほとんど出逢ったことのないレベルの、気の遠くなるような気高さ、なにか、途方もなく美しいプライド(自尊心)の香りが漂っていた気がする。
このブログを読んで関心が湧いた方は、ぜひ、彼女の以下の代表著書を読んでみてほしい。
残念ながら、日本語版は絶版状態だが、図書館で取り寄せて借りられると思う。
英語版は今もオンラインですぐに手に入る。


All Art Works © Yoko ONO
ヨーコさんの想い出を書いたんだが、あとから今日はジョンレノンの命日だったと気付いたー